《"普通"の家に見る日本の建築と社会》
建築はその建築が生まれ、生きてきた社会や時代を雄弁に語ります。
それは建築史の教科書に並ぶ寺社仏閣や有名建築家による傑作に限りません。
とりわけ戦後日本社会を知る上で重要なのは、普通の人々が住んできた"普通"の家です。
焼け野原のバラック、下町の木賃アパート、郊外の新興住宅地、埋立地のタワーマンションなど、
日本人は様々な住み方を採用してきましたが、今回私がお話しするのはハウスメーカーが工場でつくる住宅(専門用語では「工業化住宅」)です。「豊富なバリエーションがあり、高品質な工場生産を実現したメーカーが乱立している」、
こうした「ハウスメーカー」という形態は、日本だけのもので、国際的に見れば極めて奇妙な産業体です。
今回のレクチャーではまず「ハウスメーカー」が何を作ってきたかを語ることで、戦後の住宅難、朝鮮戦争、オイルショック、消費社会化、グローバリゼーションなど日本社会の変化が見ていきます。
次に、ハウスメーカー特有の法制度やシステム故の、不自由さ・窮屈さについて。こうした現代のハウスメーカー抱える問題、その上で私達がどのように住み継いでいけば良いかを、お話したいと思います。
今回のレクチャーはあくまで「ハウスメーカー」についてですが、その背景には工業化社会の中で私達がいかに住まうかという普遍的な問題があります。ハウスメーカーの話、あるいは建築の話を立脚点としながらも、より広く社会や政治、文化の問題へと展開させながら、皆様と議論できれば幸いです。
谷繁 玲央
日時:8月2日(金)19:00〜21:30
会場:国立市公民館 3F 集会室
参加費:1500円
谷繁玲央プロフィール
1994年愛知県岡崎市出身。幼少期から建築家を志す。2018年東京大学工学部建築学科卒業(隈研吾研究室)。現在は同大大学院権藤智之研究室で住宅メーカーの歴史を研究している。専門は建築構法(建築の成り立ち方の研究)と建築理論(建築の考え方の研究)。
主な賞歴等:せんだいデザインリーグ3位(卒業設計日本一決定戦)等。個展『工業化住宅の物化、そしてデモクラシー』@IHAgalleryなど。